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子どもの読書離れは本当?データで見る実態と家庭でできる対策10選

読書のすゝめ
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「うちの子、全然本を読まなくて…」「スマホやゲームばかりで心配」——そんな悩みを抱える保護者の方は多いのではないでしょうか。メディアでは「子どもの読書離れが深刻」と報じられることが少なくありません。

しかし、データを丁寧に見ていくと、実態は「イメージ」とかなり異なる部分もあります。この記事では、最新の調査結果をもとに子どもの読書離れの本当の姿を明らかにしつつ、家庭で今日から実践できる読書習慣づくりの具体策10選をお伝えします。

「子どもの読書離れ」は本当に起きているのか?データで検証する

「読書離れ」という言葉を聞くと、あたかも子どもたちがどんどん本から遠ざかっているかのような印象を受けます。しかし、複数の調査データを見比べると、もう少し複雑な実態が浮かび上がってきます。

小学生の読書量は実は「過去最高水準」

全国学校図書館協議会が毎年実施している「学校読書調査」は、1954年から続く歴史ある統計調査です。2025年の第70回調査(調査対象:全国の小4〜高3)によると、5月の1ヶ月間に読んだ本の平均冊数は以下の通りでした。

学校段階

月平均読書冊数(2025年)

不読率(1冊も読まない割合)

小学生

12.1冊

9.6%

中学生

3.9冊

24.2%

高校生

1.4冊

55.7%

出典:全国学校図書館協議会 – 「学校読書調査」の結果

注目すべきは小学生の読書冊数です。2022年には月平均13.2冊と過去最高を記録しており、2025年の12.1冊も歴史的に見て高い水準を維持しています。出版ジャーナリストの飯田一史氏が著書『「若者の読書離れ」というウソ』で指摘するように、小学生に限って言えば、読書離れは「進んでいない」のが実態です。

問題は「高校生の不読率」と「年齢による落差」

一方で、高校生の不読率(1ヶ月に1冊も読まない割合)は55.7%と深刻な数字です。政府は子どもの不読率の目標を「小学生2%以下、中学生8%以下、高校生26%以下」と定めていますが、いずれも近年は未達成が続いています。

つまり、「子どもの読書離れ」は全年齢で一様に進行しているわけではなく、小学生は比較的よく読んでいるが、中学生・高校生と年齢が上がるにつれて急速に本から離れていく——というのがデータから見える正確な姿です。

約半数の子どもの平日の読書時間が「0分」

ベネッセ総合研究所と東京大学社会科学研究所の共同調査「子どもの生活と学びに関する親子調査」(2015〜2022年、約2万組対象)によると、2022年時点で49.0%の子どもが平日の読書時間を「0分」と回答しています。1日あたりの平均読書時間も、2015年の18.2分から2022年には15.2分へと減少しました。

また、性別では男子のほうが0分の割合が多く、学年が上がるほど読書をしない子どもの割合が増える傾向がはっきりと出ています。

「スマホのせいで読書離れ」は本当か?

「スマホやゲームが子どもから読書の時間を奪っている」——この主張は直感的にはもっともに聞こえます。しかし、データを見ると事情は少し異なります。

ベネッセの調査によると、読書時間は小6の1日19分をピークに高3で12分まで下がりますが、同時期にスマホの利用時間は小4の20分から高2の140分へと急増しています。飯田一史氏はこれについて、「スマホ利用が120分増えた結果、読書時間はわずか7分減ったにすぎない」と指摘しています。

つまり、スマホの影響がゼロとは言えないものの、世間が想像するほど大きな要因ではない可能性があります。読書をする層は、他のメディア利用時間が増えても読書の時間をしっかり確保し続けているのです。

子どもの読書離れが起きる5つの原因

データを踏まえたうえで、子どもが本を読まなくなる背景にはどのような要因があるのでしょうか。主な原因を5つに整理します。

原因①:デジタルメディアとの時間の競合

動画配信サービス、SNS、ゲームなど、子どもを取り巻く娯楽の選択肢はかつてないほど多様化しています。特に中学生以降はスマートフォンの所有率が急上昇し、限られた自由時間がデジタルメディアに吸い取られる構造が生まれています。読書は「能動的に文字を追う」活動であるため、受動的に楽しめる動画やゲームと比べると、子どもにとって「労力がかかる娯楽」と感じられやすい面があります。

原因②:本との出合いの場が減っている

ブックオフの調査(2024年)では、読書機会が減った理由として「本を読む時間がない」に次いで、「図書室などの本のバリエーションが少ない」「本を買える・借りられる場所が少ない」が挙がっています。書店の数は年々減少しており、子どもが自然に本と出合う物理的な場が失われつつあるのです。

原因③:家庭環境の影響

ベネッセ・東大の共同調査では、蔵書数が多い家庭の子どもほど読書時間が長いことが明らかになっています。また、親が本を読む大切さを伝えている家庭の子どもほど読書量が多い傾向もあります。逆に言えば、家庭に本がなく、親自身も読書をしない環境では、子どもが読書に向かうきっかけが生まれにくいのです。

原因④:「読書=勉強」というイメージ

学校の読書推進活動が「感想文を書かせる」「課題図書を読ませる」形式に偏ると、子どもは読書を「楽しみ」ではなく「義務」と捉えてしまうことがあります。読書が「しなければならないこと」になった瞬間、本来の楽しさは失われてしまいます。

原因⑤:年齢に応じた本との接し方の変化

小学生は学校での「朝の読書」や図書室利用など、制度的に読書の時間が確保されていることが多い一方、中学・高校と進むにつれて部活動や受験勉強が忙しくなり、読書に割ける時間が物理的に減っていきます。これは「読書離れ」というよりも、生活環境の変化に伴う自然な時間配分の変化という側面もあります。

子どもが読書をすると何がいいの?科学的に示された5つの効果

「読書が大切」とは言われますが、具体的にどんな効果があるのでしょうか。調査研究から確認されている主な効果を紹介します。

効果①:語彙力・読解力の向上

読書を通じて新しい言葉や表現に触れることで、語彙力が自然と豊かになります。国立青少年教育振興機構の調査でも、読書量が多い子どもほど語彙力テストのスコアが高いという結果が出ています。語彙力は国語だけでなく、算数の文章題や理科・社会の読解にも直結するため、すべての教科の基礎力となります。

効果②:想像力・共感力の発達

物語を読むとき、子どもは登場人物の気持ちを想像し、自分とは異なる立場や環境を追体験します。この過程で想像力と共感力が養われます。他者の気持ちを理解する力は、友人関係や社会生活においても重要なスキルです。

効果③:集中力・思考力の強化

読書は文字を追い、内容を理解し、前後の文脈を記憶しながら進める活動です。動画のように受動的に情報を受け取るのとは異なり、能動的な集中力と論理的思考力が必要とされます。ベネッセの調査でも、読書時間が長い子どもは「理解力」「思考力」「表現力」を「得意だ」と自己評価する傾向がありました。

効果④:学力との正の相関

文部科学省の全国学力・学習状況調査でも、読書習慣のある児童生徒ほど学力テストの平均正答率が高い傾向が繰り返し確認されています。読書と学力の因果関係は厳密には証明が難しいものの、強い相関があることは間違いありません。

効果⑤:ストレス軽減・メンタルヘルスへの好影響

海外の研究では、読書がストレスを軽減し、メンタルヘルスに良い影響を与えることが示されています。物語の世界に没頭する体験は、日常のストレスから一時的に距離を置く「心の避難所」としての機能を果たします。

家庭で今日からできる!子どもの読書習慣をつくる対策10選

子どもの読書習慣は、家庭環境と保護者の関わり方に大きく左右されることが複数の調査で明らかになっています。ここからは、今日から家庭で実践できる具体的な対策を10個紹介します。

対策①:幼少期からの読み聞かせを習慣にする

文部科学省の調査(2018年)によると、幼少期に読み聞かせを受けていた子どもは、そうでない子どもと比べて過去1ヶ月に紙の本を読んだ割合が10〜20ポイント高いという結果が出ています。さらに、ベネッセ・東大の追跡調査では、小学校入学前に読み聞かせを多く受けていたグループは、中学生になっても読書時間が長いことが確認されました。

読み聞かせは早ければ早いほど効果的です。毎晩寝る前の10〜15分を「おはなしの時間」として習慣化するのがおすすめです。

対策②:家の中に本がある環境をつくる

文部科学省の「親と子の読書活動等に関する調査」(2005年)では、家に本をたくさん置いている家庭の子どもの約90%が「本が好き」と回答しています。リビングや子ども部屋に本棚を設置し、さまざまなジャンルの本を置いておくことで、子どもが自然と本に手を伸ばす環境が生まれます。

対策③:親自身が本を読む姿を見せる

子どもは親の行動を見て育ちます。親自身が日常的に本を読んでいる姿を見せることは、「読書は楽しいこと」「大人もやること」というメッセージを自然に伝えます。「本を読みなさい」と口で言うよりも、親が楽しそうに本を読んでいる姿のほうが、はるかに効果的です。

対策④:図書館や書店に定期的に連れて行く

文部科学省の調査(2017年)では、小学4・5年生の半数以上が「家族が図書館や本屋に連れて行ってくれること」が本を読むきっかけになったと回答しています。週末や長期休暇に、家族で図書館や書店に出かける習慣をつくりましょう。図書館なら無料で何冊でも借りられるので、経済的な負担もありません。

対策⑤:子どもに本を選ばせる(強制しない)

親が「この本を読みなさい」と押しつけるのではなく、子ども自身に読みたい本を選ばせることが大切です。マンガ、図鑑、ライトノベルなど、大人から見ると「ちゃんとした読書」ではないように思えるものでも、本に触れる入り口としては十分に価値があります。

読書の間口は広いほうがいい:マンガも図鑑も、オーディオブックも立派な「読書」です。「本=文字だけの書籍」と狭く捉えるのではなく、子どもが活字や物語に触れるあらゆる機会を大切にしましょう。

対策⑥:読書の時間を生活の中に組み込む

「読む時間がない」という問題を解決するには、決まった時間を読書に充てるルールを作るのが効果的です。たとえば「寝る前の15分は読書タイム」「ゲームの前に10分だけ本を読む」など、日常の中に無理なく組み込みましょう。ただし、前述したように強制読書は逆効果ですので、あくまで本人が主体的に読書をする仕組み作りが重要です。

対策⑦:読んだ本について会話する

子どもが本を読んだら、「どんな話だった?」「面白かったところは?」とカジュアルに会話することで、読書体験がより深まります。感想文のような堅い形式ではなく、日常の雑談の延長線上で本の話ができる関係性が理想的です。ここでも感想を強制しないようにしましょう。「つまらなかった」も立派な感想であり、「本当にちゃんと読んだの?」と問い詰めるような聞き方は子どもが読書嫌いになる典型です。

対策⑧:シリーズものや映画・アニメの原作から入る

子どもが好きなアニメや映画の原作小説を勧めるのは、読書への入り口として非常に有効です。「知っている世界」が本の中に広がっているという体験が、読書への抵抗感を下げてくれます。

対策⑨:電子書籍やオーディオブックも活用する

紙の本に抵抗がある子どもには、電子書籍やオーディオブックを試してみるのも一つの方法です。文部科学省もGIGAスクール構想の端末を活用した電子書籍の貸し出しなど、デジタルでの読書推進を進めています。大切なのは「紙か電子か」ではなく、物語や知識に触れる体験そのものです。

対策⑩:学校の「朝の読書」を家庭でも実践する

多くの小学校で実施されている「朝の10分間読書」は、読書習慣づくりに高い効果があるとされています。これを家庭でも取り入れ、朝食前や登校前の短い時間に本を開く習慣をつくるのもおすすめです。たった10分でも、毎日続ければ1ヶ月で約5時間の読書時間になります。

年齢別・読書習慣づくりのポイント

子どもの発達段階によって、読書への関わり方は変わってきます。年齢に応じた適切なアプローチを意識しましょう。

0〜3歳:絵本の読み聞かせで「本=楽しいもの」の原体験を

この時期は、親の膝の上で絵本を読み聞かせてもらう体験が何より大切です。ストーリーを理解できなくても問題ありません。「本と触れ合う時間は温かくて楽しい」という原体験を刻むことが、その後の読書習慣の礎になります。

4〜6歳(幼児期):自分で選ぶ・自分でめくる楽しさを

文字に興味が出てくる時期です。図書館で自分の読みたい絵本を選ばせたり、一緒にページをめくったりする体験を通じて、「自分で本を読む」楽しさの種を蒔きましょう。

小学校低学年:多読を楽しむ黄金期

学校の朝読書や図書室利用が本格的に始まる時期。「読む本のジャンルを限定しない」ことがポイントです。マンガでも図鑑でもなんでもOK。たくさんの本に触れることで、自然と自分の好きなジャンルが見つかっていきます。

小学校高学年〜中学生:「好き」を深掘りする時期

この時期は好みがはっきりしてくるので、シリーズもの、推理小説、ファンタジーなど本人の好きなジャンルを応援しましょう。「もっと難しい本を読みなさい」というプレッシャーは逆効果です。好きなジャンルを入り口に、読書の世界を広げていくのが理想です。

高校生:強制ではなく環境を整える

高校生になると外部からの働きかけの効果は薄くなるという調査結果があります。この時期は無理に読ませるよりも、本との出合いの機会を増やすことに注力しましょう。リビングにさりげなく本を置いておく、「この本面白かったよ」と自然に勧めるなど、押しつけない関わり方が大切です。

子どもの読書離れに関するよくある質問(FAQ)

Q1. 子どもがマンガしか読みませんが、それでも「読書」と言えますか?

はい、マンガも立派な読書の一形態です。マンガを通じて語彙や表現に触れ、物語を楽しむ力が育まれます。マンガを入り口にして、そこから小説やノンフィクションへと興味が広がるケースも珍しくありません。「マンガは読書じゃない」と否定するよりも、まずは「本(広い意味で)を楽しんでいること」を認めてあげましょう。

Q2. 読書感想文が嫌で読書嫌いになったようです。どうすればいいですか?

読書感想文と「楽しむ読書」は分けて考えましょう。感想文は学校の課題として必要ですが、それ以外の読書では感想を強制しないことが大切です。まずは「読んで楽しかった」「おもしろかった」という体験を積み重ねることを優先し、「読書=楽しいこと」というイメージを回復させましょう。

Q3. 何歳から読書の習慣をつけるべきですか?

早ければ早いほど効果的ですが、何歳からでも遅くはありません。文部科学省の調査では、幼児期の読み聞かせ経験がその後の読書量に影響することが示されています。小学生や中学生からでも、適切な関わり方と環境づくりで読書習慣を育てることは十分に可能です。

Q4. 電子書籍と紙の本、子どもにはどちらがいいですか?

どちらが優れているということはなく、子どもが読みやすいほうを選べばよいでしょう。紙の本には「ページをめくる触覚体験」「蔵書として残る」というメリットがあり、電子書籍には「持ち運びが楽」「フォントサイズが変えられる」というメリットがあります。大切なのは媒体ではなく、物語や知識に触れる体験そのものです。

Q5. 子どもの読書離れは日本だけの問題ですか?

いいえ、世界的な傾向です。2025年に発表されたユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンとフロリダ大学の共同研究によると、アメリカでは個人的な読書習慣のある人の割合が2004年から2023年の20年間で40%以上減少しています。デジタルメディアの普及に伴う読書離れは、先進国に共通する課題です。

まとめ:子どもの読書離れに「正しく向き合う」ために

この記事のポイントを振り返ります。

  • 小学生の読書量は過去最高水準を維持しており、「子ども全体が読書離れ」という認識は必ずしも正確ではない
  • 問題は中学生・高校生の不読率の高さと、年齢が上がるにつれて読書量が急減すること
  • 「スマホのせいで読書離れ」は部分的には正しいが、影響は一般的なイメージほど大きくない
  • 読書習慣の形成には家庭環境(蔵書数、親の姿勢、読み聞かせ)が非常に大きな影響を持つ
  • 幼少期からの読み聞かせは、中学生まで続く読書習慣につながることが追跡調査で確認されている
  • マンガ・図鑑・電子書籍・オーディオブックなど、読書の間口は広くとることが大切
  • 「読みなさい」と強制するよりも、本との出合いの機会と環境をつくることに注力しよう

子どもの読書離れに向き合うとき、大切なのは「大人自身の読書の姿勢」でもあります。「子どもの読書離れ」を嘆く前に、まずは私たち大人が本を手に取り、読書を楽しむ姿を見せることから始めてみませんか。子どもは、大人の背中を見て育ちます。

この記事を書いた人
森元仁隆
森元仁隆

元新聞記者。現場で培った取材力と表現力を基に、読者に価値ある実践的な知見を提供します。