「言葉遣い」と「言葉使い」の違いは?正しいのはどっち?例文で解説


メールや報告書を書いていて、「ことばづかい」を漢字に変換しようとしたら、「言葉遣い」と「言葉使い」の両方が候補に出てきて困った——そんな経験はありませんか?どちらも日常的に目にする表記ですが、いざ正式な文書で使うとなると「どちらが正しいの?」と不安になるものです。
この記事では、辞書の記載や報道機関の用字基準をもとに、二つの表記の違いと使い分けをわかりやすく解説します。ビジネスメールから手紙まで、もう迷わずに書けるようになりましょう。
【結論】「言葉遣い」と「言葉使い」、正しいのはどっち?
最初に結論をお伝えします。
結論:どちらも日本語として間違いではありません。ただし、一般的に広く使われているのは「言葉遣い」のほうです。ビジネス文書や公的な文章で迷った場合は、「言葉遣い」を選んでおけば間違いはありません。
『広辞苑』『大辞林』などの主要な国語辞典では、「言葉遣い」と「言葉使い」は同義として扱われています。つまり、「言葉使い」を使ったからといって誤りとはされません。
ただし、小学館『デジタル大辞泉』では見出し語として「言葉遣い」が掲載されており、「言葉使い」は単独の見出しとしてはヒットしないケースもあります。また、Googleで「ことばづかい」と検索すると、「次の検索結果を表示しています:言葉遣い」と表示されることからも、「言葉遣い」のほうが標準的な表記として広く認識されていると言えるでしょう。
「遣い」と「使い」——漢字の意味の違いから理解する
なぜ「言葉遣い」のほうが一般的なのか。その理由は、「遣う」と「使う」の漢字が持つ意味の違いにあります。
「遣う」=巧みに操る・気を配って扱う
「遣う」には「巧みに操作する」「心を配って扱う」というニュアンスがあります。「遣う」を使った言葉を見ると、その特徴がよくわかります。
- 気遣い(きづかい):相手に心を配ること
- 心遣い(こころづかい):心のこもった配慮
- 金遣い(かねづかい):お金の扱い方
- 筆遣い(ふでづかい):筆の運び方・書き方の技法
- 仮名遣い(かなづかい):仮名の使い方のルール
いずれも「ただ使う」のではなく、そこに技術や配慮、マナーが伴っていることが共通しています。「言葉遣い」は、言葉を場面や相手に応じて適切に操る態度・マナーそのものを指す言葉であり、「遣う」のニュアンスと非常に相性がよいのです。
「使う」=道具や手段として用いる
一方、「使う」は「道具や手段として用いる」という、より汎用的で実務的な意味を持ちます。
- 道具を使う
- お金を使う
- 頭を使う
- 言葉を使う
「使う」にはマナーや技術といった付加的なニュアンスはなく、「あるものを機能させる」というシンプルな行為を表します。「言葉使い」と書いた場合は、「言葉をただ使う」という直接的な意味合いが強くなり、「言葉遣い」に比べるとやや素っ気ない印象になります。
まとめると…
表記 | 漢字のニュアンス | 「ことばづかい」としての印象 |
|---|---|---|
言葉遣い | 巧みに操る・配慮して扱う | マナーや態度としての「ことばの使い方」 |
言葉使い | 道具として用いる | 個々の言葉の選び方・使い方そのもの |
報道機関の基準はどうなっている?——『記者ハンドブック』の考え方
報道や出版の世界で用字用語の基準として広く参照されている共同通信社の『記者ハンドブック 新聞用字用語集』には、「使う/使い」と「遣う/遣い」の使い分けについて以下のような考え方が示されています。
『記者ハンドブック』の基準(要旨)
- 「使う」「使い」は、主として動詞に用いる(例:「言葉を使う」「道具を使う」)
- 「遣う」「遣い」は、主として名詞に用いる(例:「言葉遣い」「金遣い」「仮名遣い」)
この基準に従えば、「ことばづかい」は名詞として使われるケースがほとんどであるため、「言葉遣い」が適切ということになります。一方、「言葉を使う」のように動詞として用いる場合は「使う」が適切です。
ただし、この基準はあくまで報道文における用字の原則であり、日本語全体の絶対的なルールではありません。実際、「魔法使い」は名詞ですが「魔法遣い」とは通常書きません。このように例外も存在するため、「名詞=遣い、動詞=使い」という分類は目安として捉えるのが適切です。
辞書での扱いはどうなっている?
主要な国語辞典における「ことばづかい」の扱いを確認しておきましょう。
『広辞苑』『大辞林』の場合
岩波書店の『広辞苑』や三省堂の『大辞林』では、「言葉遣い」と「言葉使い」を同義として扱っています。つまり、辞書の上ではどちらを使っても意味は同じであり、誤りとはされていません。
『デジタル大辞泉』の場合
小学館の『デジタル大辞泉』では、見出し語として「言葉遣い」が掲載されており、意味は「物の言い方。言葉の使いぶり」とされています。「言葉使い」は独立した見出し語としては掲載されていないケースがあり、この点からも「言葉遣い」のほうが辞書においても優先的な表記であると読み取れます。
辞書から読み取れること
辞書の扱いをまとめると、「言葉使い」は間違いではないが、「言葉遣い」のほうがより標準的・一般的な表記として位置づけられていると言えます。
場面別・「ことばづかい」の書き方ガイド
それでは、実際の文章を書く場面ではどの表記を選べばよいのでしょうか。場面別に整理します。
ビジネスメール・公式文書の場合
ビジネスメールや報告書、公式な文書では「言葉遣い」を使いましょう。フォーマルな場面で広く使われている表記であり、受け取る相手に違和感を与えません。
例:「お客様への言葉遣いには十分ご注意ください」
新聞・報道文の場合
新聞や報道文では、共同通信社の『記者ハンドブック』に準拠し「言葉遣い」が使われます。
カジュアルな文章・SNSの場合
友人へのメッセージやSNSなど、くだけた文章では「言葉使い」を使っても問題ありません。ただし、一つの文章の中で「言葉遣い」と「言葉使い」が混在する「表記ゆれ」は避けるようにしましょう。どちらかに統一することが大切です。
迷ったら「言葉づかい」(ひらがな)という選択肢も
漢字の選択にどうしても自信が持てない場合は、「言葉づかい」とひらがなで書くという方法もあります。文化庁は公用文において、読みづらい漢字や迷いやすい漢字をひらがなで表記すること(いわゆる「開く」表記)を推奨しています。「言葉づかい」であれば漢字の正誤を気にする必要がなく、読み手にもやさしい表記です。
「遣い」と「使い」の使い分け——他の言葉ではどうなる?
「言葉遣い/言葉使い」の問題は、日本語における「遣い」と「使い」の使い分けの一例にすぎません。他の言葉でも同様の迷いが生じることがあります。いくつかの例を見てみましょう。
名詞(「遣い」が一般的) | 動詞(「使う」が一般的) |
|---|---|
言葉遣い | 言葉を使う |
気遣い | 気を使う |
金遣い | お金を使う |
仮名遣い | 仮名を使う |
筆遣い | 筆を使う |
一方で、先述のとおり「魔法使い」のように名詞でも「使い」が定着している例もあります。また、「気遣い」と「気使い」のどちらも使われるなど、「遣い」と「使い」の境界線は必ずしも明確ではありません。
言語はルールだけでなく慣習によっても成り立っています。「名詞=遣い」は便利な目安ですが、最終的には辞書や信頼できる用字用語集を確認するのが確実です。
「言葉遣い」を使った例文集
ビジネスや日常で使える「言葉遣い」の例文をまとめました。メールや文書の参考にしてください。
ビジネスシーン
- 「お客様への言葉遣いには、社員一同、細心の注意を払っております」
- 「面接では言葉遣いも評価の対象となりますので、準備をしておきましょう」
- 「新人研修では、電話応対の言葉遣いについて重点的に学びます」
- 「上司との会話では、正しい言葉遣いを心がけることが大切です」
日常・教育の場面
- 「子どもの言葉遣いが気になるようになってきた」
- 「その言葉遣いは友達に対しても失礼だよ」
- 「丁寧な言葉遣いができる人は、周囲からの信頼を得やすい」
- 「国語の授業で正しい言葉遣いについて学んだ」
手紙・フォーマルな文章
- 「不適切な言葉遣いがございましたら、何卒ご容赦ください」
- 「美しい言葉遣いは、その人の品格を表すものです」
「言葉遣い」「言葉使い」に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 「言葉使い」を使ったら間違いですか?
間違いではありません。『広辞苑』『大辞林』などの主要な国語辞典では、「言葉遣い」と「言葉使い」を同義として扱っています。ただし、一般的に広く使われているのは「言葉遣い」のほうであり、ビジネス文書やフォーマルな場面では「言葉遣い」を使うほうが無難です。
Q2. 履歴書や就活のエントリーシートではどちらを使うべきですか?
「言葉遣い」を使いましょう。採用担当者の中には用字に敏感な方もいます。より一般的で標準的な「言葉遣い」を使っておけば、表記の正誤を気にされるリスクがありません。
Q3. 「遣う」と「使う」を動詞として使い分ける必要はありますか?
名詞形(○○づかい)では「遣い」が一般的ですが、動詞形では「使う」を使うのが自然です。「言葉を遣う」と書いても誤りではありませんが、「言葉を使う」のほうが日常的でこなれた表現です。共同通信社の『記者ハンドブック』でも、動詞は「使う」、名詞は「遣い」と整理されています。
Q4. メールの件名で「ことばづかい」を使う場合、漢字にすべきですか?
「言葉遣い」または「言葉づかい」のどちらでも問題ありません。件名は簡潔さが求められるため、「言葉遣い」とすればすっきり収まります。もし漢字に迷うなら、「言葉づかい」とひらがなを交ぜた表記にすれば、読みやすさと正確さを両立できます。
Q5. 夏目漱石は「言葉使い」を使っていたって本当ですか?
はい、明治期の文学作品では「言葉使い」の表記も見られます。夏目漱石の作品に「言葉使い」の表記が使われていたとされており、「言葉使い」は明治初期から存在していた表記です。当時は「遣い」と「使い」の使い分けが現在ほど意識されておらず、どちらも自然に使われていたと考えられています。
まとめ:迷ったら「言葉遣い」を選べば間違いなし
この記事のポイントを整理します。
- 「言葉遣い」と「言葉使い」は辞書上は同義であり、どちらも間違いではない
- ただし、一般的に広く使われているのは「言葉遣い」のほう
- 「遣う」には「巧みに操る・配慮して扱う」というニュアンスがあり、マナーとしての「ことばの使い方」を表す「言葉遣い」と相性がよい
- 共同通信社『記者ハンドブック』では、名詞には「遣い」、動詞には「使う」を使うとされている
- ビジネス文書・公式な文章では「言葉遣い」を選ぶのが安全
- どうしても迷うなら「言葉づかい」とひらがなを交ぜた表記もおすすめ
- 一つの文章内で「表記ゆれ」を起こさないことが最も大切
漢字一文字の違いでも、文章全体の印象や信頼感は変わります。「正しい言葉遣い」を心がけたいのであれば、まずは「言葉遣い」という表記そのものを正しく使うところから始めてみてはいかがでしょうか。



