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「子供」「子ども」「こども」正しい表記はどれ?違いと使い分けを徹底解説

コトバの不思議
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文章を書いていて、ふと手が止まった経験はありませんか?――「子供」と書くべきか、「子ども」にすべきか、それとも「こども」が正しいのか

実はこの問題、物書きだけでなく、文部科学省やこども家庭庁といった省庁間でも方針が分かれている、なかなか奥の深いテーマです。この記事では、3つの表記それぞれの成り立ちと背景を整理し、「どの場面でどの表記を使えばいいのか」が明確にわかるよう、根拠となる公的資料をもとに徹底的に解説します。

結論:「子供」「子ども」「こども」はどれも間違いではない

最初に結論をお伝えします。日本語として、「子供」「子ども」「こども」のいずれの表記も間違いではありません。どれを使っても、文法的・国語的な誤りにはなりません。

ただし、場面によって「推奨される表記」が異なります。これが混乱のもとになっているのです。

表記

推奨している主な機関・場面

根拠

子供

文部科学省の公用文、新聞・放送メディア、国語辞典

常用漢字表に基づく原則。2013年に文科省が省内で統一

子ども

教育現場、法律文(子ども・子育て支援法など)、多くのメディア記事

「供」の字への配慮から広まった交ぜ書き。1980年代以降に定着

こども

こども家庭庁、こども基本法などの行政文書

2022年にこども家庭庁設立準備室が各府省庁に推奨を依頼

つまり、「これだけが正解」という唯一の答えはなく、文書の目的や読者に応じて使い分けるのが現在のスタンダードです。

ですが、そもそもなぜこのような状況になったのでしょうか。その背景を順に見ていきましょう。

「こども」の語源と「子供」表記の歴史

表記の違いを正しく理解するには、まず「こども」という言葉そのものの成り立ちを知っておくと整理がつきやすくなります。

万葉の時代から使われていた「こども」

「こども」という言葉の歴史は非常に古く、奈良時代の『万葉集』にまでさかのぼります。山上憶良の「子等を思ふ歌」に「瓜食めば、こども思ほゆ」という表記があり、当時は複数の子がいるさまを指す言葉として使われていました。

もともと「こども」の「ども」は複数を表す接尾語で、「子+ども」という構造でした。つまり「子供たち」ではなく「子たち」に近い意味だったのです。

江戸時代に「子供」の表記が登場

文化庁国語課によると、「こども」という言葉は「子」の複数形として古くから使われており、江戸時代に「供」が当て字として使われるようになったとされています。

平安時代後期には「子共」の表記が見られるようになり、明治時代以降は「子供」に収束していったという流れです。国語辞典編纂者の飯間浩明氏は、「こども」が単数を表すようになったため、複数を示す「共」では違和感が生まれ、人偏をつけた「供」が用いられるようになったと説明しています。

重要なポイントは、「供」は当て字であり、「お供する」の「供」とは語源的に無関係だということです。この事実が、後の「子ども」表記をめぐる議論のカギとなります。

なぜ「子ども」という交ぜ書きが広まったのか

長らく「子供」が一般的な表記でしたが、1980年代から1990年代にかけて、「子ども」という漢字とひらがなを交ぜた表記が急速に広まりました。その背景には何があったのでしょうか。

「供」=「お供」で差別的?という主張

「子ども」表記が広まったきっかけのひとつが、「供」の字が「お供する」「お供え物」を連想させ、子どもを大人の付属物のように扱う差別的な表現ではないかという主張です。

1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」の前後から、子どもの人権を重視する立場を示すために、教育関係者や福祉関係者の間で「子ども」と書く慣習が広がりました。教育委員会や自治体の文書でも「子ども」が多用されるようになり、日本児童文学者協会でも1950年代半ばからほぼ「子ども」表記で統一されていったという経緯があります。当ブログでも、引用など一部の場合を除き、「子ども」と表記しています。

「交ぜ書き」への批判もあった

一方で、この「子ども」という表記に対しては国語学の観点から批判もありました。「子供」は二字で一語の熟語(熟字訓)であり、一部だけをひらがなにする「交ぜ書き」は国語を破壊する行為だという指摘です。

児童文学者の矢玉四郎氏は、「子供」は当て字の二字熟語であるため、「子ども」「こ供」と分割して書くことに強く反対する立場をとっていたことで知られています。

新聞社も漢字の交ぜ書きを原則として避ける傾向にあり、共同通信社や読売新聞社などでは「子供」表記を採用しています。

文部科学省の見解|公用文では「子供」が原則

この表記問題に対して、文部科学省は2013年に明確な方針を示しました。

2013年:「子供」に省内統一

文部科学省は2013年に、「供」には「お供」のような否定的な意味はないという見解を示しました。省内の協議を経て差別的表現には当たらないと結論づけ、公用文書における「こども」の表記を漢字書きの「子供」に統一しました。

この判断の根拠となっているのが、2010年に改定された「公用文における漢字使用等について」(内閣訓令第1号)です。公用文では常用漢字表に基づく表記が原則であり、常用漢字表には「供」の訓読みとして「とも」が登録され、用例として「子供」が挙げられています。つまり、常用漢字表のルールに従えば「子供」が正式な表記ということになります。

ただし、他機関への強制はしていない

この方針はあくまで省内の公用文に限るもので、文部科学省は各教育委員会に対して「子供」を使うよう呼びかける考えはないとの見解を示しています。実際、多くの教育委員会や学校現場では、従来通り「子ども」表記が使われ続けています。

こども家庭庁の登場で状況が変化|「こども」ひらがな表記の推奨

文部科学省が「子供」に統一してから約10年。2023年4月に発足したこども家庭庁が、新たな方針を打ち出したことで、表記をめぐる議論はさらに複雑になりました。

2022年:各府省庁に「こども」表記を推奨

2022年9月15日、こども家庭庁設立準備室は各府省庁に対して、「こども」表記の推奨についてという事務連絡を発出しました。行政文書における「こども」表記の判断基準を整理し、ひらがな表記の使用を促したのです。

ひらがな表記にした3つの理由

なぜ、わざわざ全部ひらがなの「こども」にしたのでしょうか。その背景には主に3つの理由があります。

こども家庭庁がひらがな表記を採用した理由

  1. 小さな子でも読める:ひらがなであれば、子どもたち自身が読むことができる。「こども基本法」は当事者である子ども自身に向けた法律でもあるため、当事者が読める表記にした。
  2. 「こどもの日」との整合性:祝日法では1948年の制定時から「こどもの日」とひらがな表記が使われており、法律上の前例がある。
  3. 年齢で区切らない理念の表現:こども基本法では「こども」を「心身の発達の過程にある者」と定義し、年齢による線引きをしていない。この理念を反映した表記として「こども」を選んだ。

文科省の「子供」と矛盾しないのか?

文部科学省が「子供」と統一し、こども家庭庁が「こども」を推奨する――これは一見すると政府内で方針が矛盾しているように見えます。

しかし、こども家庭庁の推奨はあくまで「こども基本法に関連する文書」を念頭に置いたものであり、日本語全体のルールを変えるものではありません。文部科学省の公用文の原則(常用漢字表に基づく「子供」表記)は引き続き有効です。

つまり、同じ政府の中でも、根拠とする法令や理念によって推奨する表記が異なっているのが現在の状態です。

新聞社・メディアの表記方針

一般の方が最も目にする機会が多いのは、新聞やWebメディアの表記でしょう。メディアの方針も確認しておきます。

新聞は「子供」派と「子ども」派に分かれる

新聞社の表記方針は、実は各社で統一されていません。共同通信社の用語集では長らく「子供」が基本表記でしたが、「子ども」も使用可とする社もあります。筆者が勤めていた新聞社では「子ども」を原則としていました。

ある調査では、神戸新聞のデータベースで「子供」が15件に対して「子ども」が126件と、圧倒的に「子ども」が多かったという結果も報告されています。読者の寄稿や固有名詞では「子供」、一般記事では「子ども」という傾向が見られました。

Webメディア・ブログではどれを使うべきか

個人ブログや企業のWebメディアでは、いずれの表記でも問題ありません。ただし、ひとつの記事の中で表記を統一すること(表記ゆれを避けること)が重要です。

「毎日ことば」が実施したアンケートでは、普段「子ども」と書く人が63.3%、「子供」が25.4%、「こども」が5.4%という結果が出ています。一般的には「子ども」が最も広く受け入れられている表記と言えるでしょう。

【場面別】表記の使い分けガイド

ここまでの情報を踏まえて、具体的にどの場面でどの表記を使えばよいかを整理します。

場面

推奨表記

理由・補足

公用文(省庁の文書)

子供

常用漢字表・内閣訓令に基づく原則表記

こども家庭庁関連の文書

こども

こども基本法の理念に基づく推奨表記

法律の名称(既存の法律)

法律名に従う

「子ども・子育て支援法」は「子ども」、「こども基本法」は「こども」と、法律名ごとに異なる

学校・教育委員会の文書

子ども

教育現場では「子ども」が慣例として定着している

新聞・報道記事

各社の方針に従う

「子供」と「子ども」が混在。記事内での統一が原則

ブログ・SNS・個人の文章

どれでもOK

好みで選んでよいが、1つの文書内では統一する

ビジネス文書・企画書

子供、または、子ども

相手先の方針に合わせるのが無難。迷ったら「子ども」が広く受容される

固有名詞

正式名称に従う

「こどもの日」「認定こども園」「子供の科学」など、正式名称をそのまま使う

表記ゆれに注意

どの表記を選んでも問題はありませんが、ひとつの文書・記事の中で「子供」と「子ども」が混在する「表記ゆれ」は避けてください。表記ゆれがあると読者に不統一な印象を与え、文書の信頼性が下がります。固有名詞(「こどもの日」「子供の科学」など)は例外として、それ以外の部分は統一しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「子供」と書くと差別的だと批判されることはありますか?

文部科学省は2013年の省内協議で、「供」の字に差別的な意味はないと公式に結論づけています。語源的にも「供」は当て字であり、「お供する」という意味とは無関係です。ただし、教育や福祉の現場では「子ども」表記が配慮の表現として根づいているため、読者や相手先の感覚に合わせることも大切です。現実的には、「子供」と書いたことで問題になるケースはごく稀ですが、不安な場合は「子ども」を選ぶのが無難でしょう。

Q2. こども家庭庁ができてから、「こども」に統一されたのですか?

いいえ、統一はされていません。こども家庭庁は2022年に各府省庁に対してひらがな「こども」の使用を推奨しましたが、これは強制ではなく、あくまで依頼です。文部科学省は引き続き「子供」を公用文の原則としており、政府内でも表記は統一されていません。一般の方が日常で使う表記に影響はなく、どれを使っても自由です。

Q3. ブログやSNSではどの表記を使うべきですか?

お好みで構いません。ただし、ひとつの記事や投稿の中では表記を統一してください。迷った場合は、最も広く使われている「子ども」を選ぶのが安全です。なお、SEO(検索エンジン最適化)の観点では、「子ども」「子供」「こども」のすべてが検索されるキーワードなので、記事タイトルや本文中に複数の表記を自然に含めると、検索流入が増える可能性があります。

Q4. 「こどもの日」はなぜひらがなで書くのですか?

「こどもの日」は1948年に制定された祝日法(国民の祝日に関する法律)で定められた正式名称です。法律の条文にひらがなで「こどもの日」と書かれているため、これが正しい表記です。「子供の日」「子どもの日」は誤りです。こども家庭庁の名称にひらがなが採用された理由のひとつにも、この「こどもの日」の前例があります。

Q5. 公用文を書く仕事をしています。どれを使えばいいですか?

所属する機関の方針に従うのが原則です。中央省庁の場合、一般的な公用文は常用漢字表に基づく「子供」が原則です。ただし、こども家庭庁関連の政策文書では「こども」が推奨されています。地方自治体の場合は、首長部局や教育委員会の方針を確認してください。判断に迷う場合は、上長に確認するのが確実です。

まとめ:大切なのは「正解探し」より「一貫性」

この記事のポイントを整理します。

記事のポイントまとめ

  • 「子供」「子ども」「こども」の3つの表記は、いずれも日本語として間違いではない
  • 「こども」という言葉の歴史は万葉集の時代までさかのぼり、「供」は江戸時代に登場した当て字
  • 文部科学省は2013年に「子供」を公用文の表記として統一。「供」に差別的な意味はないと結論
  • こども家庭庁は2022年から「こども」のひらがな表記を推奨。こども基本法の理念に基づく
  • 新聞社の方針は各社で異なり、「子供」派と「子ども」派が共存している
  • 一般のアンケートでは「子ども」と書く人が約63%と最多
  • 個人の文章ではどの表記でも自由だが、ひとつの文書内で表記を統一することが最も大切

「どれが正しいか」を追求するよりも、自分がどの表記を使うかを決め、それを一貫して使い続けることが、書き手としての信頼感につながります。

国立国語研究所の見解を借りれば、日本語の文字表記はもともと選択の幅があるものです。表記に対するこだわりは個人の自由であり、どの表記を選んでも相手を尊重する気持ちがあれば、それで十分ではないでしょうか。

この記事を書いた人
森元仁隆
森元仁隆

元新聞記者。現場で培った取材力と表現力を基に、読者に価値ある実践的な知見を提供します。