Medic Updateとは?E-A-Tを世界に知らしめたアップデートの全容を解説


「Medic Updateって、日本の健康アップデートと何が違うの?」「なぜ医療系アップデートと呼ばれるのに、Googleは医療系を狙ったわけじゃないと言っているの?」
Googleのアルゴリズム更新の歴史において、Medic Update(メディックアップデート)は「E-A-T(専門性・権威性・信頼性)」という概念を世界中のSEO実務者に浸透させた決定的なアップデートです。しかし、その正体は「医療系を狙ったアップデート」ではなく、Googleが公式に「広範なコアアルゴリズムのアップデート」と呼んだものでした。
この記事では、Medic Updateの正確な定義、「Medic」と名付けられた経緯、日本向けに行われた「健康アップデート」との本質的な違い、実際に影響を受けたジャンル、そしてE-A-Tが世界標準になった過程まで、具体的な事実をもとに解説します。
Medic Updateとは?正確な定義と名称の由来
Medic Update(メディックアップデート)とは、2018年8月1日にGoogleが全世界を対象に実施した大規模なコアアルゴリズムアップデートの通称です。
重要なのは、「Medic Update」という名称はGoogleが付けたものではないという点です。Googleの公式発表は以下のシンプルなものでした。
「今週、私たちは年に何度か行っている広範なコアアルゴリズムのアップデートをリリースしました」
「Medic Update」という通称は、米国の著名なSEOニュースサイト「Search Engine Roundtable」の運営者Barry Schwartz氏が名付けたものです。アップデート直後に順位変動が最も激しかったのが医療・健康関連のサイトだったため、「Google Medic Update」と呼ばれるようになりました。
Googleの公式見解:「YMYLを狙ったわけではない」
Medic Updateが医療系サイトに大きな影響を与えたことは事実ですが、Google自身は「YMYLサイトのみを狙ったアップデートではない」と明確に否定しています。
Googleのゲイリー・イリーズ氏は、SEOコンサルタントのPedro Dias氏へのインタビューで次のように述べています。
「8月1日のアップデートは、健康やYMYL系のWebサイトに特別に照準を絞ったものではありませんでした。アップデートがそれらWebサイトに影響を与えることができたのは、ただの嬉しい偶然(happy coincidence)です」
つまり、Googleは検索品質全体を向上させるための広範なコアアップデートを実施した結果、たまたまYMYL分野(特に医療・健康分野)の低品質サイトが最も大きな影響を受けた、という構図です。
関連記事:YMYLとは?対象ジャンル・E-E-A-Tとの関係・SEO対策を徹底解説
Medic Updateと日本の健康アップデートの違い
Medic Update(2018年8月)と、日本の健康アップデート(2017年12月)は、混同されることがありますが、性質・対象・目的がまったく異なる別のアップデートです。
比較項目 | 日本の健康アップデート(2017年12月) | Medic Update(2018年8月) |
|---|---|---|
対象範囲 | 日本語検索のみ | 全世界(グローバル) |
対象ジャンル | 医療・健康に限定 | YMYL全般(医療・金融・法律・教育など幅広い) |
Googleの公式分類 | 日本独自のアルゴリズム変更 | 広範なコアアルゴリズムアップデート |
影響範囲 | 医療・健康関連の検索の約60% | MozCastで2018年最高値の114.4度を記録 |
直接的なきっかけ | WELQ騒動(2016年) | 特定の事件ではなく、検索品質向上の一環 |
名称の由来 | Googleが公式ブログで医療・健康の改善と明言 | SEO業界の通称(Google自身は「コアアップデート」と呼称) |
ジャンル限定か | はい(医療・健康に限定) | いいえ(全ジャンルに影響。医療分野が最大だっただけ) |
この比較からわかるように、両者は「医療・健康分野のサイトに大きな影響を与えた」という結果は共通していますが、アップデートの設計思想と対象範囲が根本的に異なります。
日本の健康アップデートは「日本の医療情報の品質問題(WELQ騒動)に対処するための、ジャンル限定・国別の異例の対応」でした。一方、Medic Updateは「検索品質全体を向上させるグローバルなコアアップデートの結果、YMYL分野が最も影響を受けた」というものです。
関連記事:健康アップデートとは?日本独自のGoogle変革の全容とSEO対策を解説
Medic Updateで実際に影響を受けたジャンル
Medic Updateは「医療系アップデート」と呼ばれていますが、実際には医療分野以外のジャンルにも広範な影響がありました。
影響が大きかったジャンル
- 医療・健康:病院、クリニック、医療情報サイト、健康食品、サプリメント、ダイエット(最も影響が大きい)
- 金融・財務:投資アドバイス、保険、ローン、クレジットカード比較
- 法律:法律相談、弁護士検索サイト
- 美容:エステ、コスメ、美容整形
- 教育:語学学校、資格スクール、学習塾
- 不動産:住宅購入、賃貸情報
- ECサイト:特にYMYL商品を扱うオンラインショップ
Mozの分析データでも、医療(Health)カテゴリが8月2日の気温(順位変動の指標)で最高値の124度を記録しつつ、金融、法律、教育など他のYMYLカテゴリでも大きな変動が確認されています。
順位が上がったサイトの共通点
- 著者の専門的な資格や経歴が明記されている
- 信頼できる一次ソース(学術論文、公的機関、業界団体)への参照がある
- サイトの運営者情報が透明に公開されている
- HTTPS化(SSL対応)が完了している
- コンテンツが定期的に更新されている
順位が下がったサイトの共通点
- 著者情報が不明確または存在しない
- 専門家の監修がない、素人が書いた記事が中心
- アフィリエイト収益が主目的と思われる構成
- 情報の根拠やソースが不明
- サイトの信頼性を示す要素(運営者情報、プライバシーポリシーなど)が欠如
- 他サイトの情報をまとめただけのオリジナリティのないコンテンツ
Medic UpdateがE-A-Tを世界に定着させた
Medic Updateの最も重要な歴史的意義は、E-A-T(Expertise:専門性、Authoritativeness:権威性、Trustworthiness:信頼性)という評価基準を世界中のSEO実務者に浸透させたことです。
E-A-T自体はMedic Update以前から存在していた
E-A-Tという概念は、Googleの「検索品質評価ガイドライン」に以前から記載されていました。しかし、これはあくまで人間の品質評価者(Search Quality Rater)がサイトを評価する際のガイドラインであり、アルゴリズムに直接反映されているかどうかは不明確でした。
Medic Updateが「E-A-Tのアルゴリズム実装」を示唆した
Medic Updateの結果、E-A-Tが高いサイト(専門家が運営、権威のある情報源、信頼性の高い運営体制)が順位を上げ、E-A-Tが低いサイトが順位を下げるという、E-A-Tの概念と検索結果の変動が明確に連動する現象が世界規模で確認されました。
さらに2019年2月、Googleは「How Google Fights Disinformation(Googleはどのようにして偽情報と戦っているのか)」という報告書を公開。その中で、次のような重要な事実が明らかになりました。
「検索ユーザーのクエリがYMYLに関わるものだとGoogleのアルゴリズムが検知した場合、ランキングシステムにおいてページの権威性、専門性、信頼性(E-A-T)に関する要素をより重視する」
これは、Googleのアルゴリズムが自動的にYMYLクエリを検知し、E-A-Tを重点的にチェックしていることを公式に認めた画期的な記述でした。Medic Updateの裏側で動いていたのは、まさにこの仕組みだったのです。
Medic Updateから現在へ――E-A-TからE-E-A-Tへの進化
Medic Updateで世界に浸透したE-A-Tの概念は、その後さらに進化を遂げています。
2022年12月:E-A-T → E-E-A-Tへの拡張
Googleは2022年12月に検索品質評価ガイドラインを更新し、E-A-Tに「Experience(経験)」を追加してE-E-A-Tに拡張しました。これにより、実際に体験した人の一次情報がより高く評価されるようになりました。
この追加は、「専門家でなくても、実体験に基づく情報には価値がある」というGoogleの認識の変化を反映しています。個人ブロガーにとっては、自分自身の体験談や実践記録が大きな武器になる可能性が広がったのです。
2024年3月:ヘルプフルコンテンツアップデートのコアアップデート統合
「ユーザーに有用なコンテンツかどうか」を評価するヘルプフルコンテンツシステムが、コアランキングシステムに統合されました。E-E-A-Tとヘルプフルコンテンツの評価が一体となり、コンテンツの品質評価はGoogleの検索ランキングの恒久的な根幹原則として確立されています。
時期 | 出来事 | 意義 |
|---|---|---|
2017年12月 | 日本の健康アップデート | 日本限定でYMYL(医療)の評価を厳格化 |
2018年8月 | Medic Update | グローバルでE-A-Tの重要性が実証・浸透 |
2022年8月 | ヘルプフルコンテンツアップデート導入 | 「人のためのコンテンツ」をサイト全体で評価 |
2022年12月 | E-A-T → E-E-A-Tへ拡張 | 「経験」が評価基準に追加 |
2024年3月 | ヘルプフルコンテンツのコアアップデート統合 | 品質評価がGoogleの根幹原則として完全定着 |
関連記事:ヘルプフルコンテンツアップデートとは?仕組み・影響・対策を徹底解説
Medic Updateの教訓を踏まえたSEO対策
Medic Updateが示した「E-A-Tの重要性」は、現在のSEOにおいてもそのまま通用する基本原則です。
対策①:著者・監修者情報を充実させる
YMYL分野はもちろん、すべてのジャンルで「誰が書いたか」が重要です。著者プロフィールに経歴、資格、専門分野、実績を明記しましょう。YMYL分野では、医師、弁護士、ファイナンシャルプランナーなどの有資格者の監修が強力なE-E-A-Tシグナルになります。
対策②:権威のある被リンクを獲得する
Googleはサイトの権威性を評価する際に、そのサイトに対する外部からのリンク(被リンク)の質も参照しています。大学、医療機関、業界団体、大手メディアなど、権威のあるサイトからの自然なリンクを獲得することが、E-A-Tの「Authoritativeness(権威性)」を高めるために有効です。
対策③:信頼性の基盤を整備する
サイト全体の信頼性を支える基本的な要素を漏れなく整備しましょう。
- HTTPS化(SSL対応)の完了
- 運営者情報ページの充実(企業名、代表者名、住所、連絡先)
- プライバシーポリシーの明記
- お問い合わせ窓口の設置
- 記事の公開日・更新日の表示
- 参照した情報の出典元の明記
対策④:YMYL分野は「専門性」で勝負する
YMYL分野で個人が戦うなら、テーマを極限まで絞り込んだ「超特化」戦略が有効です。たとえば「金融全般」ではなく「iDeCoの手続き方法に特化」、「医療全般」ではなく「特定の慢性疾患の闘病体験記に特化」といった形で、狭い領域での深い専門性を示すことが、限られたリソースでE-E-A-Tを高める最善の方法です。
よくある質問(FAQ)
Q1. Medic Updateは医療サイトだけに影響したのですか?
いいえ。「Medic Update」は通称であり、実態はグローバルなコアアルゴリズムアップデートです。医療・健康分野が最も大きな影響を受けましたが、金融、法律、教育、美容、不動産、ECサイトなど、YMYL分野全般に広範な順位変動がありました。Google自身も「YMYLのみを狙ったアップデートではない」と公式に否定しています。
Q2. Medic Updateと日本の健康アップデートは同じものですか?
まったく別のアップデートです。日本の健康アップデート(2017年12月)は日本語検索のみを対象とした医療・健康分野限定のアルゴリズム変更です。Medic Update(2018年8月)は全世界を対象としたコアアルゴリズムアップデートであり、YMYL分野全般に影響しました。日本では両方の影響が重なっているため、混同されやすいのが実情です。
Q3. Medic Updateの影響から回復するにはどうすればよいですか?
E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)の強化が最も重要です。具体的には、著者・監修者情報の充実、信頼できる情報源への参照、サイト全体の信頼性基盤の整備、そして実体験に基づくオリジナルコンテンツの充実が必要です。ただし回復には数ヶ月〜1年以上かかるケースもあり、継続的な品質改善が求められます。
Q4. E-A-TはGoogleのランキング要因ですか?
Googleは「E-A-Tは直接的なランキング要因ではない」と述べていますが、E-A-Tを評価するための様々なシグナル(著者情報、被リンクの質、サイトの信頼性など)がランキングに影響しているのは事実です。2019年のGoogle報告書では、YMYLクエリに対してアルゴリズムがE-A-Tの要素を自動的に重視すると明記されています。
Q5. 個人ブログはMedic Update以降、YMYL分野で上位表示できなくなったのですか?
「がんの治療法」や「投資の最適解」のような専門性が高いキーワードでは、個人ブログの上位表示は確かに非常に困難になりました。しかし、自分自身の体験に基づくロングテールキーワード(「30代 未経験 IT転職 体験談」など)であれば、E-E-A-Tの「Experience(経験)」の観点で評価される余地があります。大手と同じ土俵で戦うのではなく、自分だけの経験が武器になるニッチ領域で勝負することが重要です。
まとめ:Medic Updateは「E-A-Tの時代」の幕開け
この記事のポイントを振り返ります。
- Medic Updateは2018年8月1日に全世界で実施されたコアアルゴリズムアップデートの通称。Googleの公式名称ではない
- Google自身は「YMYLのみを狙ったアップデートではない」と明確に否定。結果としてYMYL分野(特に医療)に最大の影響があった
- 日本の健康アップデート(2017年12月)とは対象・範囲・目的が根本的に異なる別のアップデート
- 医療だけでなく、金融・法律・教育・美容・不動産・ECなどYMYL全般に広範な影響
- E-A-T(専門性・権威性・信頼性)の重要性を世界中のSEO実務者に決定的に浸透させた歴史的アップデート
- 2019年のGoogle報告書で、YMYLクエリに対してアルゴリズムがE-A-Tを自動重視していることが公式に確認された
- その後E-A-TはE-E-A-T(経験を追加)に拡張され、ヘルプフルコンテンツとともにGoogleの検索ランキングの根幹に
Medic Updateは、Google検索の歴史において「コンテンツの品質と発信者の信頼性が、SEOの最も重要な要素になった」ことを世界に宣言した瞬間でした。Googleのゲイリー氏が「嬉しい偶然」と表現したこのアップデートは、偶然であったとしても、SEOの世界に不可逆の変化をもたらしました。
「何を書くか」と同じくらい「誰が書くか」「なぜ信頼できるのか」が問われる時代。Medic Updateが切り拓いたこの原則は、AI検索が普及する現在においてもまったく色あせることなく、むしろその重要性を増し続けています。



